結果を聞く日がやってきた
初めてコルポスコピー検査を受けてから、ずっとこの日のことを考えていました。
結果を聞きに行く日の朝、正直なところ、頭の中では最悪のシナリオも描いていました。「もし悪い結果だったら」「もし治療が必要になったら」——。だから夫にも同席してもらうことにしました。一人で聞くのはやはり怖かったし、何より私がショックを受けて話を聞けなかった時のために。
看護師として働いていると、やはりショックを受けて、先週聞いた医師の話の内容を覚えていない人がほとんどです。
大きな病院なので、受付を済ませてから診察室に呼ばれるまで約2時間。夜間授乳の疲れがたまっていた私は、待合室で抱っこしていた子と一緒にうとうとしてしまっていました。緊張しているはずなのに、育児中の母の身体はそれを上回る眠気に勝てません。たるんでるな自分と思いながらも、心の中ではずっと祈っていました。
そして夫が「ちょっとトイレ」と席を外したタイミングで、名前を呼ばれました。こういうタイミングって、大体悪いのなんででしょう。
気まずい沈黙と、「もしかして」という予感
診察室に入り、担当医に夫がすぐ戻ることを伝えると、先生は少し待ってくれました。でも、なかなか夫は戻ってきません。気まずい沈黙の中で、先生がなんとなく「話し始めようかな」という雰囲気を醸し出したとき、ふと思いました。
「もしかして、悪い結果じゃないのかもしれない。」
悪い知らせなら、先生はもっと慎重に、家族が揃うのをしっかり待つはずです。これは経験上の単なる私の直感でしたが、その予感は少しだけ心を軽くしてくれました。
やがて夫が戻り、いよいよ本題へ。
検査結果:癌ではない、でも経過観察は必要
医師から告げられた結果はこうでした。
子宮頸部3ヶ所の生検結果:異形成あり、ただし癌とは言えない。
子宮口内部:問題なし。
「癌ではない」——その言葉を聞いた瞬間、ほっとしました。
ただ、病理医による専門用語がたくさん出てきて、いろいろと書いてあるけど異常ないの?ともやもやしました。用語すべてを覚えることはとても難しかったです。いろいろと書かれていましたが、要は『異形成の状態であることは事実だが、癌ではない。HPV感染による炎症を見ているかもしれない。』ということでした。
病院側の人間ではあるものの、いつも思うのですが、検査結果の用紙をなぜ患者はもらえないのでしょう。カルテの一部として扱われるからでしょうか(カルテの内容はカルテ開示請求をして認められないと患者は閲覧できない)。健康診断の結果はもらえるのに、病院での検査結果はなかなか手元に残りません。後から自分で情報を整理したいときに、記録があると助かるのになあ、と素朴に感じながらひたすらメモしました。
これから結果を聞く方には、ぜひメモの持参をおすすめします。診察内容を録音したいという方は、事前に医師の許可を得てください。無断録音は、医療者との信頼関係やプライバシー保護の観点からお断りしている病院がほとんどだと思います。また、他患者の音声が入る可能性もあります。
録音した内容を繰り返し聞いて、生じた疑問点を医療者に質問することは、自身の状態を知り治療を一緒に考えていくうえでとても大切です。なので、録音自体は悪いことではないので、無断録音せずに事前に相談してみてください。
医学的な視点から:「異形成」とはどういう状態か
ここで少し、医療的な視点から整理しておきたいと思います。
子宮頸部異形成(子宮頸部上皮内病変)とは、子宮頸部の細胞に異常な変化が生じている状態で、癌になる一歩手前の段階を指します。主にHPV(ヒトパピローマウイルス)の持続感染が原因とされています。
異形成は重症度によって以下のように分類されます。
- LSIL(ローシル。低度扁平上皮内病変)/ CIN1:軽度の異形成。多くの場合、自然消退します。
- HSIL(ハイシル。高度扁平上皮内病変)/ CIN2・CIN3:中等度〜高度の異形成。治療の検討が必要になることがあります。
そして細胞診の結果としてNILM(ニルム)という言葉が出てきますが、これは「正常」または「異常なし」を意味する判定で、子宮頸がん検診で最も望ましい結果とされています。
今回の私の結果は「異形成あり、癌ではない」という状態でしたのでCIN1でした。軽度から中等度の変化がある段階と思われ、定期的な経過観察が必要なフェーズです。
今後の治療方針:経過観察を続けながら
担当医から説明された今後のスケジュールはこうです。
定期的に細胞診を継続し、3回連続でNILM判定が出るまで3〜4ヶ月ごとに細胞診を行います。その間、もしHSIL(高度異形成)に進行した場合、または2年近く経過しても結果に変化がない場合は、治療(円錐切除術など)に移行する方針とのことでした。
病院としては、HPVの種類によって経過観察の頻度を変えることは無いので、HPVの型を同定するPCR検査はやらないとのことでした。なので、私は何型のHPV感染なのかは分からず仕舞いでした。希望すればやってはくれるそうですが、まあ検査代も高いし、分かったところで計画は変わらないので希望しませんでした。
今回の治療方針は、現在の婦人科領域における標準的な管理方針と合致しています。子宮頸がんは、その多くが正常粘膜→異形成→上皮内癌→浸潤癌というプロセスを経て、5〜10年という長い年月をかけて進行していきます。だからこそ、定期的な細胞診による経過観察が非常に有効で、たとえ異形成が見つかっても、適切なフォローを続けることで早期に対処することができます。言い方は良くないですが、『むしろ今見つかってラッキー』です。たとえ癌だったとしても治療法があり、癌の中でも経過がゆっくりなタイプなので、『待ち構えて対応できる』ポジティブに捉えることにしました。
医師の言葉が、一番の薬だった
検査結果の説明が終わったとき、先生はこんな言葉をかけてくれました。
「とりあえず今のところは、癌ではないことが分かりました。子宮頸癌は5年、10年かけてゆっくりと進んでいきます。きちんと経過観察をしていれば、悪化しても初期の段階ですぐに治療に切り替えることができます。だから今は、気持ちを楽にして、笑って過ごしてください。それが一番。今まで多くの患者さんを見ていても、後ろ向きになりすぎるといいことないな、と思うことがあるので。」
この言葉が、どれだけ心強かったか。看護師として、分かってはいるけどやはり実際に言ってもらえると響くものがありました。
医学的な事実として、子宮頸がんは早期発見・早期治療により予後が非常に良好な癌のひとつです。0期(上皮内癌)での治療であれば5年生存率はほぼ100%とされており、I期でも90%を超えるといわれています。だからこそ、定期検査の継続は命を守る行為に直結しています。
『異常』と診断されたことで、癌になる前の悪い奴を見張る機会を得ることができたんです。『少しでも悪い素振りを見せたらやってやるからな』と監視しつづけることができるようになったんです。やはり中には、不正出血から子宮頸癌に気づくパターンもあります。それに比べたら、症状のないうちに発見できただけでも運が良かったといえると思います。
でも医師の言葉が響いたのは、その医学的な正しさだけではありませんでした。「笑って過ごしてください」という一言に、患者のメンタルを大切にする姿勢が感じられて、思わず目頭が熱くなりました。
看護の世界でも、患者のQOL(生活の質)を守ることは治療と同等に重要とされています。不安やストレスが免疫機能に悪影響を与えることは研究でも示されており、「前向きに過ごすこと」は医学的にも意義があります。
検診を受け続けることの意味
今回の一連の経験を通じて、改めて強く感じたことがあります。それは、定期検診を続けることが、自分の命を守る一番確実な方法だということです。
子宮頸がんは、検診で早期発見できる数少ない癌のひとつです。細胞の変化(異形成)の段階で見つかれば、多くの場合は経過観察で対処できます。上皮内癌(0期)のうちに治療できれば、5年生存率はほぼ100%。しかし症状が出てから受診した場合には、すでに進行しているケースも少なくありません。
日本では20歳以上の女性を対象に、2年に1度の子宮頸がん検診が推奨されています。それでも実際の受診率は約40〜50%にとどまっており、欧米諸国と比べると依然として低い水準です。
「忙しいから」「怖いから」「何も症状がないから大丈夫」——そう思って後回しにしてしまう気持ちは、よくわかります。かつての私もそうだったかもしれません。今回だって、妊娠という機会が無ければこのタイミングで検査を受けることはなかったでしょう。でも、異形成は症状がありません。出血も痛みもないまま、静かに進行していくことがあります。だからこそ、定期的に検査で確認することに意味があります。
要精密検査という診断をされた時、正直怖かったです。「え?自分が?がんかもしれない?今まで引っかからなかったのに?」とショックでした。でも、その通知は「見つかった」という知らせであり、「まだ間に合う」というサインでもありました。検診を受けていたからこそ、ここまで来られました。
もしこの記事を読んでいる中に、「検診、しばらく行ってないな」という方がいれば、ぜひこれを機に予約を入れてみてください。自治体の無料クーポンが使える場合もあります。難しく考えなくていいんです。まず、一歩だけ。
「笑って過ごすこと」と先生に言ってもらえたのは、定期検診を続けて、早い段階で見つけることができたからだと思っています。その「笑える未来」を手にするために、検診は何より大切な習慣だと実感しました。。
※ この記事は個人の体験をもとにした記録です。医療的な判断や治療方針については、必ず担当医にご相談ください。
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